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講座
能動輸送
Active Transport
高垣 玄吉郎
1
Genkichiro Takagaki
1
1慶応義塾大学医学部生理学教室
1Department of Physiology, Keio University School of Medicine
pp.961-967
発行日 1970年11月15日
Published Date 1970/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202202
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はじめに
分泌とか吸収という用語に代って,能動輸送(active transport)という言葉が用いられるようになってから,すでに久しい。しかし,今日でも,能動輸送の概念は必ずしも確立しているとは言えない。したがって,この問題を詳しく論じれば,一冊の成書になるはずだが,それは筆者の能力ではとても叶わぬことだ。また,多くの生物学の教科書の一章のような無難な記述にとどめれば,理解し難いものとなるだろう。
能動輸送の最も一般的な定義は次のようである。すなわち,拡散からも電気化学的勾配からも,またその組合せからも,説明しえない物質の動きを能動輸送というのである。本稿では,「講座」の本来の目的にかんがみて,能動輸送の基本を理解しうるように,まず比較的単純なNaイオンの輸送について,記述しようと思う。生物膜は多くの物質を輸送しているのであるから,それを一々記述しては,かえって読者は混乱するだろう。そして,能動輸送を支えているエネルギー供給系の問題,具体的にはNa, K-ATPaseについてやや詳しく述べたいと思う。
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