Bedside Teaching
Vanishing Lung
本間 日臣
1
,
望月 博之
1
Hiomi Honma
1
,
Hiroyuki Mochizuki
1
1虎の門病院呼吸器科
1Toranomon Hospital Chest Clinic
pp.435-441
発行日 1970年5月15日
Published Date 1970/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202146
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はじめに
胸部X線写真上,広汎に肺紋理が消失してX線透過度が非常に高まっているものには,気胸,巨大嚢胞,一側透過肺などが含まれる。
この中で一側または両側の肺尖部に好発し年月とともにその大いさを増大してゆく進行性の経過をとり,終に重篤な呼吸器症状をひき起こすに至る特異な経過をとる気腫性嚢胞がある。1937年BurkeはX線所見の印象から「消えゆく肺」「消えつつある肺」を意味するものとしてvanishing lungというあだ名をつけた。このものは,徐々に巨大な嚢胞を形成して胸郭の半ば以上を占めることがあるが,残存部にはびまん性に気腫性変化を伴わないから,健康肺部が圧縮されて呼吸器症状を呈するまでには,かなりの年月を要する。組織的にはSpencerによれば,局在性の汎小葉性の気腫である。細気管支閉塞はなく,従って他の型の気腫性嚢胞で大いさのあまり増大しないものすなわちブレブやブラとも異なる。筆者らはこのようなものを巨大気腫性?胞また進行性気腫性嚢胞と呼ぶのがよいと考えており,vanishing lungとか葉間胸水をvanishing tumorと呼ぶような通俗的な診断名を使用することには賛成できない。人によってはvanishing lung症候群として,一側透過肺のような肺の形成不全や,一部の気管支拡張症を含めているものもあるようであるが,現在ではかかるものの鑑別は可能であるから,それぞれの疾患名を附けるべきであろう。
以下に2症例を呈示し,現在なお統一されていない肺?胞症の分類をふりかえり,その中での本症の位置づけとともに肺?胞症の各型を解説整理してみよう。
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