症例 肺がんとまちがわれた症例(1)
Vanishing tumor
金上 晴夫
1
1国立がんセンター・呼吸器科
pp.1549-1552
発行日 1965年10月10日
Published Date 1965/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402201034
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早期発見,早期手術のために
最近がんに対する一般の関心が高まり,がんの疑いのもとに外来を訪れる患者が激増している。肺がんの場合もその例外ではない。せきが出る,胸がいたむ,あるいは血痰が出たといつて呼吸器科の外来を訪れる患者が多くなつて来たが,これは大変喜ばしいことである。これまで,結核腫あるいは肋膜炎という診断で結核の治療をうけ,かなり長く治療したにもかかわらず肺の陰影がますます増大したので,はじめて肺がんを疑い,外来に送られて来るが,その時にはもはや手のつけようがないといつた場合をしばしば経験している。そのような患者をみて第一に考えることは,なぜ肺がんを第一に疑つて外来に送つてくれなかつたのかということである。肺がんの治療の原則があくまで早期発見,早期手術である現在,一刻も早く肺がんの診断をつけて手術を行なう以外に患者を助ける方法はないのだから,悠長に患者の経過を観察して診断をくだすということは許されない。外来を訪れるたくさんの患者のなかには,すでに手遅れの患者もいるが,なかには肺がんの疑いのもとに紹介された患者が肺がんではなくて,じつは肺化膿症であつたり,結核腫であつたり,不定型肺炎であつたり,また心不全によるVanishing tumorであつたりすることもある。
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