Japanese
English
綜説
脳脊髄液酸—塩基平衡と換気
Acid-Base Balance of Cerebrospinal Fluid and Ventilation
窪田 達也
1
Tatsuya Kubota
1
1東京逓信病院麻酔科
1Department of Anesthesiology, Tokyo Teishin Hospital
pp.941-953
発行日 1969年11月15日
Published Date 1969/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202085
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
脳組織環境における酸—塩基状態の恒常性維持はイオン組成の恒常性とともに,脳神経組織が正常に機能する上で必要なことである。脳脊髄液(CSFと略す)酸—塩基状態は脳組織環境のそれを反映する1つの指標であり,脳組織環境の恒常性がいかに維持されているかを解明する手掛りを与えるものとして重要である。それと同時に,逆にCSF酸—塩基異常が脳組織環境にいかなる影響を与えるかも興味ある点である。
近年,血液の酸—塩基異常が存在するにもかかわらず,CSF pHは比較的安定しており,その安定性を維持する機構が解明されつつある。一方,CSF pHは換気調節に関与するとともに脳血流量にも影響を与えていることが知られている。また,脳組織酸—塩基状態を反映して,意識障害時にはしばしばCSF酸—塩基異常が見出されている1,2)。CSFは血液の酸—塩基状態とは必ずしも平行するものではなく,血液酸—塩基異常のみの補正は,逆にCSFの異常をさらに悪化させる危険性もあり,臨床治療上からも重要視さるべぎものとなってきている。
ここでは主として,最近論議の焦点となっている2,3の点—(1) CSF pHの調整機序,(2) CSF pHと換気との関係--について言及した。
Copyright © 1969, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.