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はじめに
「ジュニアコース」で"データのバラツキ"の問題をとりあげ,専門分野の諸先生がデータのバラツキに関する考察をするから,数学者の立場から,これにコメントをしろと医学書院編集部からお申し入れがあったのは昨冬のことであった。
私たちもデータ処理に当っていろいろの困難にぶつかり,時には思わぬ失態をやらかすことが往々にあるので専門家の先生方がまとめられた論文にコメントするなどはその任ではないと平にお断りしたことを覚えている。
しかし数理統計の立場からもう一度ながめさせていただくのは,私たち自身の勉強にもなることと思い直して編集部に乞われるまま厚かましくもお引受けした次第である。もちろん,数学者の立場からなどとおこがましいことを考えているのではなく,統計実務屋としてご一緒に勉強させていただく積りで各論文を読ませていただいた。
各論文ともきわめて詳細な分析が行なわれ,私ども専門外の人間が立入る余地がないほどにも思われたが,論文中記述がつくされていないために詳らかでない点について主としてコメントをさせていただいた。なかには,当該分野の中では十分に証明され,熟した事実として取り扱われている問題が,私たちがあまりに専門知識がないために問題点として取り上げた場合も多くあろうと思うが,その点は素人の弁として御寛裕をお願いしたい。
詳細は各論文についてお読みいただくこととして,全般的にいえることは母集団の設定と標本の独立性についてはくどいほどの吟味を必要とすること,正規分布に従うという仮定をそう簡単においてはならないということ,少数例を取り扱う場合は少数例であるために生ずる危険が大きいので十分に検討を要すること,データーの取捨選択は大変むずかしい処理問題であり,これを間違うとどんな結論でも導き出すことが可能となってしまうこと,そのようなことからも,グルーピングのためにいま少し,要因分析とか判別関数の手法を援用されたらと思う点があることなどがあげられる。しかし,これらの点は私ども自身も時におかす不十分さであり,その点からいえば,論文6編はどれをとっても十分な統計的処理と考察がなされ優れた論文ということができよう。
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