巻頭言
心電図学者と数学
木村 栄一
1
1日本医科大学
pp.527
発行日 1959年6月15日
Published Date 1959/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404200776
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心電図が生体の電気現象の記録である以上,その理論的解釈に数式が用いられるのは当然である。心電図を深く考えれば考えるほど,どうしても数学にたよらなければならない問題がおこってくる。現代心電図学の創始者の一人であるWil—sonは,その2重層説の提唱にあたって,楕円積分を用いてP波の分析を行い。これを出発点の一つとした。
それ以来数式を取扱う心電図学者がふえ,わが国でも名大の豊島英雄助教授,おなじく日比野内科の板津英孝君,京大の早瀬正二講師,東大上田内科の村尾覚・佐藤光正の両君などが優秀な論文を発表しておられる。また最近では筆者の大学の加藤漸君が戸塚武彦教授の指導のもとに興味ある分析を公けにした。戦前のことであるが,筆者自身も上記Wilsonの論文の楕円積分を理解しようとして,数学を勉強しなおしたことがある。当時は2重層説のまだ定説となっていない時代であり,その当否を判断するにはどうしてもWilsonの示した数式を理解しなければならなかったからである。
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