Japanese
English
綜説
新生児の呼吸
Respiratory Physiology in Newborn Infants
石田 尚之
1,2
Hisayuki Ishida
1,2
1慶応義塾大学医学部小児科
2国立小児病院
1Department of Pediatrics, School of Medicine, Keio University
2National Children's Hospital
pp.828-836
発行日 1968年10月15日
Published Date 1968/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404201942
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はじめに
新生児には出生してからの数分から数日の間に,形態的にも機能的にも,種々の大きな変化がおこるが,特に呼吸器系の変化は,子宮内でのいわば水の中の鰓呼吸にも比すべき状態から,大気下における肺呼吸を営む劇的な変化であり,機能的にみると,約300年前Walter Needhamが,"子宮の肺"と名付けた胎盤で行なわれていた呼吸から,白己の肺による呼吸に変換する画期的な変化でもある。
新生児の呼吸については,この出生直後の変化を中心として,発生学上の形態的,ならびに機能的な種々の問題,第1呼吸の開始,その後の短期間の間の肺呼吸の確立など,まことに興味深く,しかもきわめて重大な問題を多く含んでいるが,本稿においては,出生前の肺の発生から,確立された新生児の呼吸に至るまでの人生の初期における複雑微妙な呼吸の諸開題を,現在明らかにされている段階で論じてみたいと思う。
小児科領域において,新生児の呼吸生理を究明することは,日常の臨床にたずさわる場合にもきわめて大切なことである。というのは,現今他の年齢層の死亡率が著明に減少しているにもかかわらず,新生児死亡率はあまり減少していない。そしてその理由は,未熟児死亡率がほとんど変化していないからであり,その未熟児の死亡例の40%以上に何らかの呼吸障害がみとめられている。したがって新生児の管理の上に新生児の呼吸生理の解明が非常に重要なことになってくる。われわれはもし余裕があればその点も考慮におきつつ,臨床病態生理学としての新生児の呼吸の問題についても論じてみたい。
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