特集 周産期における研修医・新人助産師/看護師教育の必修知識 新生児編
新生児の特徴 呼吸
長 和俊
1
CHO Kazutoshi
1
1JCHO北海道病院小児科
pp.275-278
発行日 2024年3月10日
Published Date 2024/3/10
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000001462
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はじめに
胎児は呼吸・代謝・栄養・体温維持など生命維持活動の大半を母体と胎盤に依存している。胎児はエネルギー消費の大部分を身体の成長に充てることで,非常に速い速度で成長する。一方,ヒトは進化の過程で頭部が大きくなり,直立二足歩行を獲得した代償として難産になった。子宮外生活に個体独自で適応できるだけの成熟を待つと頭部が大きすぎて生まれることができなくなるため,ヒトはある程度未熟な状態で出生する。多くの哺乳類が出生してすぐに歩行するのに対して,ヒトは出生して約1年経過してから歩行が始まる。この生後1年間は胎外胎児期とよばれる。新生児は,循環・代謝・内分泌・栄養など多くの身体機能が未熟な状態で出生し,出生のシグナルに呼応して子宮外生活への適応を開始し,それぞれの機能が一定の時間をかけて成熟する。例えば,呼吸が開始して肺血管抵抗が低下することで循環の適応が開始するが,肺血管抵抗が成人と同じ程度に低下するには約1か月を要する。ビリルビン代謝の未熟性は生理的黄疸の一因であり,熱産生のスイッチであるTSHサージの影響は生後数日残る。母乳からの栄養で生命が維持できるようになるまでの間は,胎児期に蓄積した栄養を異化してエネルギーを調達する。しかし,呼吸は生まれたその瞬間から生命維持にとって必要であることから,出生までに特に周到な準備がなされている。
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