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はしがき
心臓や心筋の力学的特性を論ずるには,ポンプ作用の他に心収縮状態を直接あるいは間接的に評価する必要のあることが最近になり注目されてきた。心機能を示す一つの指標としての心収縮能はRushmer1), Leonard and Hajdu2)のいうごとく,厳密に定義することはむずかしく,研究者によって色々な意味に使われている。通常心収縮能を考えるときには,狭義には心臓壁を構成している心筋線維自体の収縮特性と,広義には心臓の総合効果としてのポンプ作用の有効性をも含めて論議が行なわれている。ポンプ作用の有効性は主として心臓が外部に対して行なった仕事ならびにその効率とによって評価されるものであって,根底にある機序は結局は筋の力学的特性に依存する。一方心筋線維の収縮特性はA.V. Hillらの骨格筋の力学的特性3)に準じて,その基本的性質の一つである初期筋長・張力関係あるいは張力・短縮速度関係をもとにして理解され,in situの心臓にまで適用されようとしている。しかしながら,拍動心における収縮能を心筋線維のレベルにまでおよんで解明する場合,実際には心臓壁における心筋線維の数,配列の状況,心内腔の形状と広がり,心筋への興奮伝播などは必ずしも一様でなく,測定上多くの仮定と近似とを必要とする。それにもかかわらず,これらの試みが積極的になされ,非開胸イヌやヒトにおいても応用が可能となりつつあるのは,心筋外因子によって影響されずに純粋に収縮能を判定し,普遍的統一的な概念を引き出そうという考えからである。現段階では適用の限界を知って正しく理解するならば臨床にもかなり有用な知見を与えてくれる可能性がある。以下,われわれの成績も含めて,この方面の最近の知見を紹介する。
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