ジュニアコース 仮定をお忘れなく
脳循環
田崎 義昭
1
Yoshiaki Tazaki
1
1東邦大学医学部第二内科
12 nd Department of Internal Medicine, School of Medicine. Toho University
pp.777-784
発行日 1968年9月15日
Published Date 1968/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404201937
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
1945年Kety & Schmidtらが発表したN2O法1),により,はじめて「ヒト」の脳循環が定量的に測定できるようになった。Kety & SchmidtのN2O法は1948年に完成したものとして,正常値と共に報告され2),その後20年を経た今日まで臨床的脳循環研究の主流をなしている。本法は脳全体の平均血流量を測定する方法であり,脳の局所の血流量や,時々刻々変化する場合の脳循環をとらえることはできないという難点がある。しかしN2O法がそれまで未開の分野であった「ヒト」の脳循環および代謝の生理および病態の解明に多大の貢献をなしとげたことは誰しも認めるところであろう。これらの成果はKetys3), Sokoloff4), Scheinberg5), Lassen6),相沢7)らの綜説および著書によくまとめられている。このように世界中に広まりよく用いられているN2O法でさえ,理論的に未解決な点もあり,いくつかの仮定の上に成り立っているので,実際に測定するとき,またその成績を評価するにあたっては常にこれを知っておくべきである。N2O法以後脳循環測定法にもいろいろな進歩がみられ8)9),ことに最近では脳局所の血流量の測定を目ざして活発な研究が行なわれつつあるが10)〜12),これらの測定法は,いずれも理論的に多くの問題をかかえている。結局,現在のところ脳循環を正しく理解し,その研究をさらに一歩すすめるには,それぞれの測定理論を熟知し,どんな仮定の上に成り立っているかをよくわきまえておくことが必要である。
Copyright © 1968, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.