ジュニアコース 仮定をお忘れなく
腎循環
本田 西男
1
Nishio Honda
1
1東京大学医学部吉利内科
11st Department of Internal Medicine, Faculty of Medicine, University of Tokyo
pp.785-793
発行日 1968年9月15日
Published Date 1968/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404201938
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はじめに
腎の血管は,他の臓器血管(たとえば,脳循環,冠循環)とちがって栄養血管というよりむしろ機能血管としての意味がつよい。生理的状態では,腎血流量は心送血量の1/4〜1/5を占め,そのうち約90%は腎皮質を流れ,残り10%前後が腎髄質を流れ,前者は糸球体濾過機能と関係し,後者はcountercurrent系の一環をなし,皮質から乳頭先端に向かって高くなっている髄質内滲透圧勾配の維持に関係しているといわれている。したがって,ある条件下(たとえば出血性低血圧や尿管閉塞)で腎皮質血流量と腎髄質血流量の分布に変化がおこり,髄質血流量が絶対的に,または糸球体濾過値に対し相対的に変化すると,髄質内滲透圧勾配,ひいては尿の濃縮に影響するものと考えられる。このように腎循環は腎機能と密接な関係をもつが,両者の関係の解明には腎全体の循環動態を知るだけでなく,腎皮質,髄質各層の循環動態を知る必要がある。
過去約10年間,腎内血管床の内圧,流量の測定に大きな努力が払われてきた。しかしそれらの測定法または測定値の多くは幾多の仮定,限られた条件のもとでのみ信頼できる。ここでは腎血管の内圧および血流量に関した基礎的問題のいくつかに触れてみたい。
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