Japanese
English
臨床
腸間膜動脈不全症
Mesenteric Arterial Insufficiency
太田 怜
1
Satoshi Ota
1
1自衛隊中央病院内科
1Department of Internal Medicine, the Central Hospital Self-defence Force
pp.657-664
発行日 1968年8月15日
Published Date 1968/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404201926
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まえがき
高年者の,ことに循環器疾患で,その末期に下痢や下血がみられたり,剖検上,消化管に原因不明の新鮮な潰瘍のみとめられることが,最近とみに多くなっているようである。これらの消化管には,粘膜の浮腫や出血性壊死,粘膜下静脈の拡張などがみられ,消化管壁の乏血の結果であろうことは推測されるが,その支配血管に器質的な閉塞機転が,必ずしもみとめられるわけではない。その原因は,さらに高位の循環不全であろうということについて,1959年以来種々の興味ある報告がなされているが,その結果,腸間膜動脈不全症mesenteric arte—rial insufficiencyという言葉に,多少曖昧な点も生じている。すなわち,腸間膜動脈について器質的な変化のあるものも含めている人1),機能的なもののみに限っている人2)〜4),腸間膜動脈の状態はともかくとして,消化管に上記のような非可逆的な組織所見をきたしたものは,腸間膜動脈不全とはいわないという立場の人5),などである。
そこで本論では,自験の臨床例を中心にして,主に本症の定義に関する私見を述べてみたいと思う。
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