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はじめに
同位元素とは周知のごとく,互いに原子番号が等しく,質量数の異なる元素のことであり,周期律表の中で同じ場所を占めることから1913年Sodyによりギリシャ語で"同じ場所"を意味するisotopeの名が与えられている。同位元素の中には放射線を放出する放射性同位元素(radioisotope=RI)が1,000種以上含まれている。元素の化学的性質は原子番号により決まるので,同位元素は化学的性質が等しく,化学的に分離することはできない。したがって化学的性質のまったく等しいRIまたは標識化合物を,生理的条件をまったく乱さない程度の極微量をトレーサーとして生体に投与し,鋭敏な放射線検出器を用いて,その生体内での動きを追跡することができる。医学におけるRIの応用は近年目覚しい発展をとげているが,新しいRIまたは標識化合物の開発と,新しい測定機器の開発が両輪となって発展を推進してきたといいえよう。
RIを生体に投与し,より多くかつより確実な情報を得ようとするには,より多くの放射能を投与する必要がある。しかし一方では生体に対する放射能の影響をできるだけ少なくすることが求められる。そこで99mTc,113mInのごとき短半減期でβ線をもたず,安全に大量投与できる核種の開発が期待されるわけである。他方,より高感度の放射線検出器を用いることにより,RIの投与量を少なくし,かつ情報を多くすることができる。この意味で光電子増倍管の進歩に伴って発展したシンチレーションカウンターの導入は画期的な進歩をもたらしたといえよう。
検査の目的および対象となる臓器ないし組織に応じて,特徴あるRIまたは標識化合物が用いられ,適切な測定装置が選ばれるわけであるが,ここではある測定装置が与えられた場合,それを用いてどのような呼吸・循環機能検査が行なえるかという立場で考えることにより,呼吸・循環機能検査におけるRIの応用,取扱い法の理解を深める一助にしたい。
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