巻頭言
麻酔学領域の数式的解明法
宮崎 正夫
1
1京都府立医科大学麻酔科
pp.363
発行日 1967年5月15日
Published Date 1967/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404201767
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最近数年間に著しく発展した麻酔学における問題の取扱い法に,数式的解明法がある。基礎となる概念は古く前世紀末から散見されていたが,近代的に集大成して数量化を明確にしたのは,肺と組織における不活性ガスの交換に関する1951年のKetyの理論が,展開の嚆矢となったようである。以来,MEやbiophysicsの急速な発展とともに,麻酔学においても,Severinghaus,Eger, Price, Mapleson, Nunn, Landahl, Mac—krell, Perl,恩地らの人達によって,麻酔剤の吸収・分布・排出について数式化が進められた。
これらの人達が麻酔剤の吸収・分布・排出について数式化を行なったのは,吸収はy=1−e—t,排出は実験結果から容易に生体分画量として分析しうるy=ΣAie—λitなる曲線を画くからである。すなわちこの問題は最も数式化しやすく,さらに換気量,ガス相の排出状態,心拍出量,血液一気相分配係数,血液—組織分配係数,組織灌流量などをparameterにすれば,正常成人の生理的状態における麻酔剤の動態を,RC analogでsimulateすることは,現在では決して難事でない。したがって数学的模型をいろいろと作り,それにもとついてSevering—hausやMaplesonのようにanalog anesthesiaを生み出すことは,かなり自由になった。
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