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友愛数とは,その数字自身を除いた約数の和同士がそれぞれの数字となるものをいう.具体的には,220と284は友愛数で,220の約数,1+2+4+5+10+11+20+22+44+55+110=284,284の約数,1+2+4+71+142=220となる.1184と1210もこうした関係にあるが,その組合わせが無限に存在するかどうかは,いまだ明らかにされていない.神秘的な数の偶然である.一方,その数字の約数の和がその数字になるものを完全数という.例えば6がそれにあたり,1+2+3=6となる.このほかに28,496など限られた数字しかない.最近の世の中は実学志向で,その学問が目に見える形で社会に還元されることが求められるが,こうした講義を学校の授業で聞くことができたら,きっとより数学に親しめただろうに,と観る者に思わせてしまうのが,映画「博士の愛した数式」である.
この映画は,外傷性健忘のため80分しか記憶の持たない数学者“博士”(寺尾聰)と,博士の身の回りの世話をするために雇われた家政婦の杏子(深津絵里),そして杏子の息子の3人のさわやかな心のふれあいを描いている.杏子はシングルマザーで,家政婦をしながら10歳のかわいい息子とともに懸命に生きている.彼女の今度の就職先は,9人もの家政婦を交代させたという件の博士の家である.博士はケンブリッジ大学を卒業した新進気鋭の数学者だったが,交通事故で脳挫傷を負い,短時間しか記憶が持たないようになってしまっていた.だから杏子の1日は,毎朝初対面として自己紹介をし,同じ質問を博士から受けるところから始まる.彼女は家政婦をしながら,持ち前の明るさで博士の心とふれあううちに,博士の優しさや実直さ,純粋な心に引き込まれていくが,博士もそうした彼女に母性を感じ,2人は家族のような関係が持てるようになっていく.時折,杏子が黒板に記している数式や記号の意味を尋ねると,博士は嬉々として説明するのであった.ある日,杏子に子供がいることが博士に知れることになる.「子供を独りぼっちに家に残しておくなんて許されない」.この鶴の一声で,杏子の息子は放課後を博士の家で過ごすようになり,その平らな頭の形から“ルート”というあだ名で呼ばれるようになった.
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