Japanese
English
綜説
硬塞を証明しえないQ波—一過性非硬塞性異常Q波
Transient Abnormal Q Waves in the Absence of Pathologic Evidence of Myocardial Infarction
石見 善一
1
,
渡部 哲也
1
,
三村 信英
1
Zenichi Ishimi
1
,
Tetsuya Watanabe
1
,
Nobuhide Mimura
1
1虎の門病院循環器科
1Department of Circulation, Toranomon General Hospital
pp.101-110
発行日 1967年2月15日
Published Date 1967/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404201737
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I.心筋硬塞とQ波
心筋硬塞における心電図は,Bayleyら1)〜3)の実験的研究による明快な説明をえて,概念がほぼ確立され,ことに心筋壊死を反映するものと考えられたQ波の出現が,この疾患の特徴的な所見とされるにいたった。心筋壊死は一般に非可逆な組織学的変化を残すものであるから,上述の考え方からすると,いったん現われたQ波は永久に消失しないのが原則で,突然に出現したQ波が新しい硬塞の生成を示唆するほか,持続するQ波の存在は陳旧性硬塞の前歴を推測させるものとされてきた。ところが,心筋硬塞のいわば十分条件ともいうべきこのQ波が,剖検で必ずしも硬塞を証明できない例にも出現しうること,さらに明らかな硬塞曲線の心電図所見が単に一過性で,ST上昇のみならずQ波も数日〜数週のうちに消失し,恒久的な所見とはならない例のあることが,最近しばしば経験されている。われわれもこれに類する症例を集めてすでに報告し,その特殊性を重視した4)が,このような経験的事実はQ波出現に関する古典的な説明と矛盾するもので,従来の解釈は多少とも補足修正せねばならないことになる。
以上のような観点から,硬塞曲線の出現機序にかんする新しい概念を紹介するとともに,一過性非硬塞性Q波を示した自験例にもとづいて硬塞曲線の推移についての臨床的重要性に考察を加えてみたい。
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