呼と循ゼミナール
急性心筋硬塞(VI)—前壁硬塞と下壁硬塞
兼本 成斌
1
1東海大学医学部内科
pp.698
発行日 1975年8月15日
Published Date 1975/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202799
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心電図による心筋硬塞の診断率は約80%とされ部位としては前壁硬塞と下壁ないしは後壁硬塞に大別される。従来,急性心筋硬塞の早期予後に関しては前壁硬塞と下壁硬塞との間に有意差を認めないとするものと前壁硬塞の方が予後が悪いとする2様のデータがあった。最近になって両者を心電図学的あるいは血行動態的に比較した論文1)2)が発表されているので急性期における前壁硬塞と下壁硬塞の差違について考えてみたい。
まず臨床的にみるとRussellら2)の貫壁性心筋硬塞33例のうち前壁硬塞が22例で下壁硬塞が10例であり合併症のなかった例は前壁硬塞5例(22%),下壁硬塞4例(40%)であった。軽度ないしは中等度の心不全はそれぞれ13例(57%),6例(60%)に認められた。ショックは4例,肺水腫は1例でいずれも前壁硬塞であった。第3音は前壁硬塞では50%に聴取されたのに対して下壁硬塞では9%にすぎなかった。
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