Japanese
English
講座
肺のリンパ循環
Pulmonary Lymphatic Circulation
吉良 枝郎
1
,
北村 論
1
Shiro Kira
1
,
Satoshi Kitamura
1
1東京大学医学部中尾内科
1The Third Dept. of Internal Medicine, Faculty of Medicine, University of Tokyo
pp.1119-1123
発行日 1966年12月15日
Published Date 1966/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404201716
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はじめに
肺のリンパ循環障害として,臨床的にまずもっともしばしば問題になってくるのは肺水腫であろう。しかしもう一歩すすめて,日常臨床的にリンパ循環と関連する問題を考えてみると,肺結核の初感染巣とその所属肺門リンパ腺,肺癌における肺門リンパ腺への転移なども,循環という考え方からいえば,もっとも抵抗の少ない所属リンパ系への進展であり,肺癌の場合の対側肺内および非所属リンハ腺への転移はその中枢のリンパ流路の閉塞,すなわちリンパ系路の抵抗の増大によるより抵抗の少ない流路へのリンパの逆流によると考えられ,肺内癌性リンパ管炎と称される病像もかかる機構により発生すると考えられる。また最近問題になっている慢性肺炎,慢性気管支炎由来の肺線維症も,炎症の結果血管外に濾出したリンパの吸収機転が炎症のために障害された結果おこると考えられるが,これもリンパ流路の抵抗の増大によるリンパの鬱えの結果と考えうるものである。このように考えてくると,肺リンパ循環の正しい理解は,臨床的にもその疾患の成立,進展の機序解明に,ひいてはその治療の上に大きな意味をもつものである。
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