Japanese
English
講座
肺血管床
Pulmonary Vascular Bed
福島 保喜
1
,
吉良 枝郎
1
Yasuyoshi Hukushima
1
,
Shiro Kira
1
1東京大学医学部中尾内科
13rd Department of Internal Medicine, Faculty of Medicine, University of Tokyo
pp.45-54
発行日 1968年1月15日
Published Date 1968/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404201860
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I.言葉のいみ
肺血管床はPulmonary vascular bedの訳語である。肺の血液循環路を誰がいつごろからこうした呼び方を始めたのか,文献上はっきりしない。したがってその用語の動機や内容を,当初の原義にそって考えてみることができない。多くの文献の中にその定義らしいものが見あたらないし,言葉の使われ方も著者によって必ずしも一致していない。そこでこの言葉の内容を顧みながら,その術語としての用法を理解することが,肺血管床を把握する一つの道筋と考えた。
一般に血管床という術語に接した場合,予備知識が不十分ならば二つの取りようがあると思われる。それは血管という言葉がきわめて一般であるから,"床"という語をいかに解釈するかにかかるであろう。Dorland医語辞典のbedの第一義は,A supporting structure or tissueと出ている。苗床とか温床に使われるこの語意にしたがうならば,血管床は血管支持床ということになる。血管系を臓器の中で空間的に支持し位置づけして,その生活と機能を支える構造といえよう。もう一つの考え方は水理学などで普通に使われる河床・川床と同じ語義の用い方で,血管床は血管血流床を意味することになる。Burton6)は,彼の「循環の生理と生物物理」の中で血管床の説明に,河川管理人を仕立てて流床と循環の関係を考えさせている。彼の肺循環に関する文献や討論の中では,明らかにこの考え方が貫かれており,議論の運びに何の支障ともなっていないので,肺血管血流床がまったく共通の概念となっているようにも思える。
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