巻頭言
形態学と機能
諏訪 紀夫
1
1東北大学医学部病理学教室
pp.363
発行日 1966年5月15日
Published Date 1966/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404201585
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私は病理解剖学を専門とするから,どうしても形態学的な物の見方をする事になる。呼吸や循環の領域でも病理形態学がこれまである寄与をしてきたことは事実であろう。しかし今日ふりかえってみると,従来病理学者が臓器をみる場合,何か根本的な方針の錯誤があったような気がする。あるいは根本的な方針的が立たないままで病気の説明に引きずりこまれたといった方がよいかもしれない。たとえば冠動脈硬化を見出して,それで心筋梗塞を説明するというようなゆき方が病理学者の常套手段であった。しかしこの場合扱われているものは臓器の栄養条件とその障害の結果だけであって,心臓が臟器としてもつ形態が,心機能をいかに左右するかということは意識の外に追出されてしまう。臓器を障害する条件はわかっても,その条件下に臓器がいかなる機能を営むかについては病理学からはきわめて限られた回答しか出せなかった。
いったい形態学は臓器の機能面にもっと直接に肉薄できないものだろうか。そして形態と機能を単に対比するだけではなく,形態から機能を因果の関係にしたがって誘導できないものだろうか。
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