Japanese
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講座 心電図シリーズ(3)
ST・T(とくに冠不全について)
ST・T Changes with Special Reference to Coronary Insufficiency.
新谷 博一
1
Hirokazu Niitani
1
1昭和大学医学部第3内科
1The 3rd Department of Internal Med., School of Med., Showa University.
pp.183-190
発行日 1965年3月15日
Published Date 1965/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404201422
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はじめに
心電図上のST・Tの変化は,臨床上もっとも重要な意義を有する所見である。ST・Tの変化は,(1)心室肥大,(2)冠不全(狭心症など),(3)心筋硬塞,(4)その他の心筋傷害(各種の心筋炎,心膜炎,甲状腺疾患,神経筋肉疾患など),(5)ジギタリス剤などの薬剤の影響,(6)血清蛋白異常(心筋症Myokardose),(7)電解質代謝異常,(8)精神神経的影響,(9)体位・食事などの影響,(10)脚ブロックなどいろいろな場合に現われる。すなわちST・Tの変化を示すものには心臓の器質的異常を有するものばかりでなく,機能的な,心外性の要因によってST・Tの変化を生じている場合もけっして少なくない。したがってST・Tの変化をみたらすぐ心筋傷害と判定せず,上述のいろいろな場合の可能性を検討しなければならない。これらのうち心室肥大,冠不全,心筋硬塞,ジギタリス効果などの定型的な場合,脚ブロックでは比較的診断も容易であるが,その他の場合には臨床症状,既往歴,諸検査所見の慎重な検討と綜合して判断しないと,鑑別が困難なことが少なくない。本稿においては,これらのST・Tの変化を起こしうるすべての場合について述べることは紙数が許さないので,代表的なものであり,かつまた筆者が興味をもって経験してきた冠不全,とくに運動負荷試験におけるST・Tの変化を中心として述べてみたい。
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