Japanese
English
ジュニアコース
換気力学 (3)抵抗と仕事
Mechanics of Breathing (3) Resistance and Work.
大和 庸次
1
Yoji Yamato
1
1九州大学医学部附属胸部疾患研究所
1Research Institute for Diseases of the Chest, Faculty of Medicine, Kyushu University.
pp.191-200
発行日 1964年3月15日
Published Date 1964/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404201302
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I.まえがき
日常誰しも経験する事であるが,私共が物体を動かしたり,曲げたり,伸ばしたりする時には力が要る事を実感として感ずる。又同時に物体の重さ,形,硬軟等の物質的特徴や,物体を動かす距離,動かす速さ,曲げる程度などにより力のかけ具合が違う事も知つている。日常私共が無意識に呼吸をしている場合にはこの様な力を実感としては感じないが,呼吸時には胸廓の動きがあり,空気の流れが生じているといつた事実から,呼吸をするためには力が必要なのではないかという事は容易に類推される。例えば,火を吹き消す時などには実感として呼吸の力を感する事が出来るのである。この力の一つか肺の自動的な収縮力の結果として生ずる圧力の形で発見され,実測されたのは19世紀の半ば頃であり,予想の正しかつた事が初めて立証され,しかも数量としてはつきり取り出されたのである。
呼吸を行なうには私共が意識するとせぬに拘わらず,力が必要であるという事が取りも直さず呼吸の抵抗であり,この抵抗に打ち勝つて呼吸をするという事が呼吸の仕事である。換言すれば,呼吸をする時に力が要るという事は呼吸運動を妨げる力,即ち抵抗が呼吸器系の中に存在するという事であり,これに打ち勝つて換気するために仕事が必要なのである。
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