Japanese
English
綜説
運動と臨床(1)
The Clinical Aspect of the Muscular Exercise. (I)
岡村 輝彦
1
Teruhiko Okamura
1
1浦和市立結核療養所
1Urawa Municipal Sanatorium.
pp.156-161
発行日 1964年3月15日
Published Date 1964/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404201297
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I.はじめに
臨床医は診断および治療に当つて安静もしくは運動ということを念頭に入れて診療を行なつている。例えば腎炎の治癒判定のため入浴や運動の後の尿をしらべたり,雑音を明らかにするため運動直後に聴診することがある。冠不全を知るため,Masterの階段昇降運動後に心電図をとることも行なわれる。又,結核に関しては仕上げの治療として作業療法が行なわれた。しかしこれらの場合でも常に確たる理論や根拠を以つて判断又は指示しているとは限らない。直観や経験に頼つていることが少なくない。急性疾患では特にそうであるが慢性疾患でも「安静」の指示は重要である。しかし反面安静による害も念頭に入れる必要がある。長期の安静が筋肉痛,食欲不振,便秘,不眠等をひきおこすことはよく経験される。さらに就下性肺炎や血栓症のような重大な合併症をおこすこともある。そこで場合によつては積極的に「運動」を指示することもある。心筋梗塞の回復期に血栓症をおこさないように,またさらに心筋における血管の新生吻合を促進する意味である程度の運動をさせることもある。外科手術のあと運動させることが全身状態ひいては手術局所の回復を促すことも周知の通りである。そこでどの程度の運動をどの時間行なつてよいか,一つの「処方」をするのが本当の診療であろう。これには運動そのものの生理学的な知識のもとに患者の病態を解析し判断する必要が生じてくる。
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