Japanese
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特集 肺循環(1)内科領域
副血行路
Collateral Circulation
香取 瞭
1
Ryo Katori
1
1東北大学医学部中村内科
1The 1st Dept. of Internal Medicine, School of Medicine, Tohoku University
pp.91-100
発行日 1963年1月15日
Published Date 1963/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404201178
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はじめに
肺は2つの異なる循環体系,即ち肺循環と気管支循環により支配されている。前者は言うまでもなく右心と左心の間に介在し,肺の本質的機能であるガス交換を営むものである。後者は前者とはその起始部,規模,機能において明かに異なり,大動脈より発し胸廓内諸臓器(たとえば気管支壁,肺動脈,肺静脈,肺神経,リンパ腺,粘液腺,食道,心膜など)への栄養血管として分布し,肺静脈あるいは奇静脈に帰流するものである。両血管系は後述するように正常肺においても毛細管性,後毛細管性にいくばくかの交通路を有し,気管支静脈血の一部が肺静脈に注ぎ静脈血混合を起す影響はあるが,気管支循環はその規模において肺循環の1%前後であるため,正常肺においては殆んど問題となるような影響は及ぼしていない。しかしながら,気管支拡張症,原発性肺癌,肺結核などの慢性肺疾患や,肺梗塞,フアロー四徴などの肺動脈血液減少を伴う肺循環障害時には,気管支動脈は著るしく発達するばかりでなく,肺動脈と前毛細管性,毛細管性に随所において複雑な吻合を形成することが明かにされている1)。他方,僧帽弁狭窄症や左心下全時において左房圧が上昇した場合,本来,奇静脈,半奇静脈に移行する気管支静脈(肺外気管支静脈または肋膜肺門部静脈)と肺静脈との間の吻合か著明に発達,拡張し,肺静脈—気管支静脈—奇・半奇静脈—上大静脈なる短絡路が形成されることが形態学的研究から推測されている。
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