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文献抄録
奇異呼吸—Maloney, J, V.;Schmutzer, K. J, & Raschke, E.:J.Thorac. Cardiovasc Surg. 41(3):291-298, March 1961
Paradoxical respiration and "Pendelluft"
pp.30
発行日 1962年1月15日
Published Date 1962/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404201055
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胸成や胸部圧潰傷で奇異呼吸は有名だが,1側肺から他肺へ空気が振子様に移動する,"Pendelluft"にもとづく障害であるとされている。しかし実はその証明が欠けているので,著者は理論的実験的にそれを検討した。イヌを用い胸部を閉鎖したまま左側3・4肋骨切除を行つて奇異呼吸をつくる。胸廓運動はelectro—mechanical transducerで記録,肺内の空気移動は気管内挿管,pneu—motachogram描写,赤外線ガス分析法,胸腔内圧測定でしらべた。胸成を行う前も,胸成後奇異呼吸が発生したあとも,ともにPendelluftは証明されなかつた。5頭のイヌの気管内CO2濃度変化,空気流量,左右胸腔内圧,は胸成前も後も大体同じで,Pendelluftはみとめにくい。臨床例で肺の圧量曲線を描写してもPendelluftは見出しがたい。Pendelluftの認明される唯一の場合は開放性の一側気胸で,患者が自発呼吸をいとなむときである。麻酔の呼吸嚢をガスで過度に拡充すると,稀にPendelluftが発生する。それで胸成または胸部外傷時の呼吸障害に,Pendelluftが主役を演ずるという説は放棄すべきであろう。呼吸障害は胸廓の圧量曲線の変化に関係があるので,肺活量・最大呼吸能が低下し,患側のみでなく健側の呼吸も抑制されるためとおもわれる。
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