巻頭言
肺胞膜における機能と形態との相関
宮本 忍
1
1日本大学
pp.811
発行日 1961年12月15日
Published Date 1961/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404201041
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胸部X線写真の読影が今日のように発達したのはごく少数の研究者の名人芸によるものと思われがちであるが,名人芸そのものは多年にわたる病理解剖学的研究の集積の結果である。その上,断層写真,気管支造影法,肺血管造影法というX線写真撮影の新しい武器が加わつたために,X線検査を行えば肺病巣の性状が立ちどころにわかつてしまうような錯覚が生まれつつあることも確かである。しかし,X線写真はあくまでも陰影であつて病巣の実体を示すものではないから,これから病気の性状を診断するとしてもそれはせいぜい推定の域を出るものではない。今日では,X線写真に現われたすべての陰影を肺結核によるものと考えるものはないと思うが,この病気があまりにも多いために誤診を招き早期の肺癌を見落すおそれがある。
他方,最近数年間に著しい進歩を遂げた心肺機能検査法についても同様の反省を加えねばならないが,多数の検査を行えば胸部X線写真上に現われた病巣が何によるものかをかなりの程度まで診断できるようになつた。例えば,銭形陰影(Coin lesion)が直径3cm以上あればそれが結核腫であるか,それとも肺癌であるかは動脈血O2飽和度を測ればかなりの程度まで鑑別できるというわれわれの主張も,数年間にわたる詳細な心肺機能検査に関する研究の結果である。
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