今月の主題 冠硬化症の新しい知見
冠循環の病理
冠硬化症の冠循環—器質面から
岡田 了三
1
1順大・循環器内科
pp.152-153
発行日 1973年2月10日
Published Date 1973/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402204591
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冠状動脈は大動脈基部で左・右Valsalva洞より出る2本の主枝よりなり,左主幹はさらに前下行枝と回旋枝にわかれて左心室心筋の大部分を,右枝は右心房・右心室と左心室後壁の一部を灌流している.この動脈は図1Aのように中膜のよく発達した筋型動脈で,加齢とともに内膜の弾性線維とコラゲン線維が徐々に肥厚してくる.30歳台後半より40歳台前半にかけて内部にコレステロール沈着を伴うつよい内膜の限局性肥厚が発生し,図1Bのように内腔の50%以上におよぶ狭窄がみられるようになる.かような硬化板による狭窄が末梢域の動脈血灌流を減少させて,心筋内に虚血性変化を発生させると"冠状不全"の状態となる.硬化板は大部分限局性に発生するため,健常側の中膜平滑筋が収縮すると発作性に末梢部の虚血状態がつよまる事態が発生し,"狭心症"となる.アテローム硬化板が発育をつづけて図1Cのように内腔狭窄が75%をこえ,さらにアテローム内出血など,急速に内腔をせばめる要因が働くと末槍心筋の虚血性病変は非可逆性となり"心筋硬塞"を発生する.
この場合硬塞の拡がりから予想される灌流枝に当たる動脈に図1Dのように血栓による閉塞を伴うことが多く,大量壊死(M)型硬塞で71%,散在壊死(S)型硬塞で29%にみられる.このことより典型的なM型硬塞は冠状動脈血栓と関係して発生するとみなされ,硬塞と同意義に"冠状動脈血栓症"の名称が長く愛用され,一方S型硬塞はいわゆる冠状不全の極型とみなされていた.
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