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綜説
心臓刺激伝導系—形態学の立場よりみた今日の問題点
Über das Reizleitungssystem des Herzens.
大塚 長康
1
N. Otsuka
1
1京都府立医科大学解剖学教室
1Anatomisches Institut der Medizinischen Akademie Kyoto.
pp.419-427
発行日 1960年6月15日
Published Date 1960/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404200898
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I.緒言
生命のある限り,絶え間なく,収縮と弛緩を繰り返えす心臓の規則正しい運動の起原となるべき最初の興奮が何処で起り,いかにして心臓全体に伝わるか?——また周囲組織から完全に切り離され,体外に取り出された心臓がなおも自動運動を続けうるのは何故か?という疑問については,古来多数の研究者の興味をひき,数限りない報告が種々の角度からなされて今日に及んでいる。
すでに古くWillis(1664)は心臓収縮を起す刺激は神経細胞内に発生し,その興奮は神経線維によつて心臓全体に伝えられるとの神経元説を,またHaller(1759)は心筋細胞自身のもつ固有の興奮性が心臓収縮のための興奮発生とその伝導を可能ならしめているとの心筋元説をとなえた。その後,心臓に分布する神経の研究が進むにつれて心臓内における神経節の存在が明らかとなり,この心内神経節が心臓収縮のための興奮発生の場であり,これが心臓自働中枢であろうと考えられた(Bichat 1822)。更にCarlson(1909)はカブトガニの剔出心臓を用いて,その神経の摘出,切除が心臓運動の恒久的な停止をおこさせることを実験的に証明し神経元説に有力な根拠をあたえた。
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