Japanese
English
綜説
慢性肺疾患にともなう赤血球増多症に関する諸問題
Polycythemia due to chronic pulmonary diseases.
横山 剛
1
,
岡崎 敬得
1
,
森 雅弘
1
Takeshi Yokoyama
1
,
Takashi Okazaki
1
,
Masahiro Mori
1
1慶応大学医学部石田内科
1Department of Internal Medicine, School of Medicine, Keio University
pp.412-417
発行日 1960年6月15日
Published Date 1960/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404200897
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I.はじめに
慢性肺疾患,とくに慢性肺気腫あるいは肺線維症のごとく,動脈血O2飽和度の低下が長期間持続するような患者に,しばしば二次的な赤血球増多症を見ることは,以前からよく知られていたところである。この場合,かかる赤血球増多は他の二次的な赤血球増多症,すなわち高山居住者あるいは先天性心疾患患者などに見られるものと同様に,anoxiaによつて骨髄が刺激され,赤血球の生成促進をきたすものと考えられている。しかしながら,Wilson1),Hammersten2)あるいはGrant3)らが指摘しているように,これら慢性肺疾患にともなう赤血球増多症では,赤血球数の増加に比して血色素量の増加を伴わず,したがつて平均赤血球血色素濃度の低下をきたすことが注目されている。私どももこの点に関して自家症例に対して検討を加え,ほぼ同様の結果を得ているが4)5),慢性肺疾患におけるかかる赤血球増多症の特徴は,その発生機序を他の二次性赤血球増多症と同様に,単にanoxiaに対する生体の代償機転とのみからは理解できないのではないかと考えられる。一方,慢性肺性心の発生に際して,すでにFerrer6)7)の説にみられるごとく,anoxemiaによつて生じた赤血球増多症および多血症は,心拍出量の増加と肺動脈高血圧を促進し,右室拡張さらに右心不全にいたる一つの重要因子であると理解されている(第1図)。
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