巻頭言
気休め薬と
斎藤 十六
1
1千葉大学第2内科
pp.235
発行日 1960年4月15日
Published Date 1960/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404200873
- 有料閲覧
- 文献概要
気休め薬を判定するとき,薬物を使つた群と薬物を用いない群とにわけて,比較することがある。このさい,気休め薬を使つた群の観察も,たいせつである。血圧のさがりかただけを目標にするとき,気休め薬は,かなり有効であるという成績がでる(1)。気休め薬の作用は,だいたい,暗示にあるという点で,多くの人の意見は一致している(2)。患者の知性が低いほど,気休め薬がきくということも,一おう,もつともである。それゆえ,乙地の点数が甲地より高くてよいなどと,冗談をいう人がいる。わたくしは,気休め薬の作用を,もつと,まじめに老えたい。むしろ,知性と気休め薬にたいする反応とのあいだには,あまり,特殊な関係はないように思う。Tテスト法で,たしからしを行なつて,数学の先輩に叱られたことがあるから,「思う」としておく。心理の本は,暗示に,陽性のものと,陰性のものとがあると教えてくれた。つむじまがりの陰性反応を,「しろうと医学の大家」に,ときどき,みうけるが,もつと,注意したい。治療にたいする否定的な態度は,薬効をきめるさいにも,やつかいな問題である。患者を知ることについての研究は,あまり進歩していないようだ。生物学も,心理学も,暗示にかかりやすい因子を,まだ,明らかにしてくれない。患者の暗示にたいする反応は,しばしば,述べられている。
Copyright © 1960, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.