文献抄録
祛痰剤と喀痰の粘稠度—Forbs, J. and Wise, L.;Expectorants and sputum viscosity, No. 6999: 767, 1957.
野口 忍抄
1
1慶大内科
pp.301
発行日 1958年4月15日
Published Date 1958/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404200615
- 有料閲覧
- 文献概要
祛痰剤の効果については未だ疑問の余地を残している。我々は肺結核7例,気管支拡張症2例において,アンモン及び吐根の併用内服,ヨードカリ内服,蒸気吸入,5%CO2及び95%O2混合気の吸入,トライトンW.R.1339・エロゾル吸入,トリプシン・エロゾル吸入,デオキシリボヌクレアーゼ・エロゾル吸入等を行い,その効果を喀痰の粘稠度及び喀痰量の変化より検討した。即ちこれらの治療方法のいくつかを,各症例において5日間づつ継続し,その間喀痰の粘稠度及び喀痰量を測定し,治療前と比較した。喀痰の粘稠度測定にはUniversal Torsion Viscometerを使用した。又喀痰量は24時間量を測定した。
治療前5日間全く変化のなかつた喀痰粘稠度は,アンモン及び吐根1日15cc投与によつて,9例中2例において低下した。ヨードカリは1日1〜1.6g投与しないと効果が少いといわれている。我々は0.3—0.6—1.0gと日毎に増量し,7例中2例において粘稠度の低下を認めた。蒸気吸入では9例中1例に,CO2,O2吸入では8例中2例に粘稠度の低下をみたが,0.5%トライトンW.R.1339の吸入では,6例全例とも低下を認めなかつた。又膿粘液性の喀痰溶解に蛋白分解酵素を使用することは合理的であるが,喀痰中の線維素含有量はそれ程高くないために,トリプシンの使用は,この目的に対して理想的な酵素とは言い難い。
Copyright © 1958, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.