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測定原理と手法について
日常診療や臨床研究において,自然喀出痰を確実に採取することは困難である.高張食塩水を吸入すると,その浸透圧較差から気道粘膜に水分が移動し,粘膜被覆液が増加する.また,線毛運動や咳反射も促進される.そのため増加した気道分泌液が気道粘膜管腔面の種々の細胞や非細胞成分を捉え込みながら痰として喀出されやすくなる.このような作用を利用して気道の病態に関わる情報を収集する技術の体系を誘発痰と通称する.
誘発痰の手法としては,1992年にHargreave門下のPinらによる報告1)を出発点として技術的な改良が加えられたものが一般的である(表1).実際,この技術的改良と検査意義の確立過程におけるHargreaveらの貢献は大きい2~4).基本的には気道収縮軽減のために予めβ2刺激剤を吸入し,超音波ネブライザーを用いて高張食塩水を3%から10分毎に濃度を上げて5%まで30分間吸入させる.被験者には繰り返し痰を喀出するよう促す.採取されたサンプルから唾液を可視的に除去した後,0.1% dithiothreitol(DTT)をサンプル量と等量で振盪混和し,37℃で15分程度加温して十分に粘液成分を溶解させる.さらにナイロンメッシュで濾過し,総細胞数を算出する.遠心により細胞ペレットを分離し,サイトスピン標本を作製した後,May Grunwald Giemsa染色(またはその改変法)を施し細胞分画を測定する.遠心上清は液性成分の測定に利用する.自然喀出痰と同一日に採取された誘発痰を,上記方法で処理して比較した場合,液性成分の濃度はやや誘発痰で低いものの非扁平上皮細胞の分画には両者で違いがなく,細胞の生存率は誘発痰のほうが良好(77% vs 47%)であると報告されている5).また,118名の非喫煙健常者に誘発痰を行い,その総細胞数と細胞分画を調べた前向き研究があり,女性あるいはアトピー素因は好酸球比率が有意に高いという結果が得られている6).
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