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講座
僧帽辨辨膜症の肺動脈高血圧の病態生理
Pathophysiology of Pulmonary Hypertension in Mitral Valve Disease
曲直部 寿夫
1
,
藤本 淳
1
Hisao MANABE
1
,
Kiyoshi FUJIMOTO
1
1大阪大学医学部第一外科教室
1Ⅰst. Surgical Clinic, Medical School of Osaka Universlty
pp.321-336
発行日 1956年4月15日
Published Date 1956/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404200354
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肺動脈高血圧は心臓カテーテル法が産んだ一つの新しい概念である1)。僧帽弁弁膜症の肺循環の病態生理は心カテーテル法を中心とせる心肺性動態の解明により漸次明確となり2)3)4)5),特に最近左心房圧が非開胸状態で測定可能となり6),本症の血行動態は完全に評価出来る様になつて来た。斯くて本症の肺動脈高血圧の特性が一層明確となつた。茲に僧帽弁弁膜症と肺動脈高血圧の問題を取上げ,僧帽弁弁膜症なる病理解剖学的命名と,肺動脈高血圧なる病態生理学的命名の2つの関係を解明せんとするのが本講座の意義である。
本論に入る前に考えたい事は,僧帽弁弁膜症に対して,病理解剖学的考察より,臨床的に,狭窄,狭窄兼閉鎖不全,開鎖不全に分けて,夫々の症状が述べられている。勿論従来の治療が弁口修復に向けられたのではなく,Digitalis療法等の対症療法が行われていた時は,これにても充分と思われた。然し,病理解剖所見が病態生理所見を表わす事は困難であるのは当然であり,又本疾患の病態生理を考えたり,外科手術を行う際には更に正確な立脚点に立つて弁障碍の状態即ち病型を決定しておかねばならぬ。例えば,fish mouth typeの,狭小となつた僧帽弁口では,病理解剖学的には狭窄として判断されるが,実際には動きの不良となつた弁尖では逆流を伴つている事は多くの外科医により指摘された事である。故に真の病理並生理を解明するのは外科医であるとさえ述べられている。
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