Japanese
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特集 心肺性危機
肺感染症と心肺性危機
Pulmonary infection and acute cardiopulmonary insufficiency
本間 日臣
1
,
三上 理一郞
1
,
山中 晃
2
1東大冲中内科
2東大病理
pp.67-75
発行日 1956年1月15日
Published Date 1956/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404200323
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1.まえがき
肺感染症が個体の心肺機能に及ぼす影響は,1つは健全肺胞の減少や無気肺の発生や気管支攣縮などのような,感染症に起因する肺そのものの変化にもとづくものであり,他の1つは発熱による代謝の亢進や中毒による全身症状など心搏出量や心臓の能率に働きかける諸因子の誘起にもとづくものである。この場合心肺共に健全で,肺感染症が治癒し去る迄の期間の負荷に堪え得る時は,急性心不全や呼吸不全を起すことはないが,既に気腫とか線維症とか嚢胞とか塵肺症とか瓣膜症とかの異常を心肺系に持つている場合に感染症による上述の負荷が加わると,こゝに急性anoxiaや右室不全を起し重篤な事態をひき起すことになる。また,たとえ之等の異常があらかじめ存在しなくても,肺胞—毛細管ブロツクを生ずるような病変が肺全体にびまん性に起る時には,明かな呼吸不全から重篤な症状を示す。更に慢性感染症は,線維症,気腫,肺動脈硬化症をひき起すから,これらの変化が生じた後には,変化の生ずる以前に比し,同じ程度の感染症であつても著しく強い症状をひき起すようになる。例えば同じ喘息発作が健全な肺に起る場合と,長年にわたつて上述のような変化を起した肺に起る場合とでは症状に甚しい軽重の差が認められる。
我々は,是迄経験した症例の中から興味ある数例をえらび出しその経過の上から,此の間の消息を検討してみたいと思う。
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