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特集 心肺性危機
心肺性危機と脳循環障碍
Cardio-Pulmouary Emergeney aud Cerebrouascular Disorders
冲中 重雄
1
,
豊倉 康夫
1
1東京大学冲中内科教室
pp.9-26
発行日 1956年1月15日
Published Date 1956/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404200318
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Ⅰ.まえがき
脳卒中(脳の急性循環障碍)といえば,直ちにその責任を脳出血,脳血栓,脳栓塞或は脳血管攣縮など脳血管乃至脳組織における一次的病変に求めんとした時代は既に過ぎた。如何なる病的プロセスも,たとえそれが見掛上一定の臓器を選択しているように見えても,常に全身的な要因の中で発生し,そして絶えず全身的な反応を伴いつゝ進行するものであることは今更いうまでもなかろう。その病的プロセスが,就中循環障碍の形態をとつている場合には,当然心臓血管系,呼吸器系の関与する役割は最も重要であつて,心,肺,腎及び末梢血管系の慎重な考慮なくしては到底疾患の全貌を把握することは困難である。脳自体の重量は全体重の僅か2%を占めるに過ぎないにも拘わらず,全心搏出量の14%を要し,全酸素消費量の約22%を占めるという事実1)を想起するだけでも,心肺性危機が如何に重篤な脳障碍を惹起するかを容易に理解せしめるであろう。
脳に器質的な変化の見出される脳循環障碍—例えば脳出血或は脳軟化(脳血栓,脳栓塞)においても,その背後に存する心脈管系の障碍乃至心肺性危機の意義は重大である。一方,脳に一見器質的変化の認められない急性脳循環障碍2)(屡々Apoplexie ohne grob-anatomischen Befundと呼ばれるもの)は心肺性危機と一層密接な関連をもつものである。
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