映画の時間
―やがて鯨は姿を見せなくなり,老姉妹の季節も静かに変わっていった…―八月の鯨
桜山 豊夫
pp.248
発行日 2013年3月15日
Published Date 2013/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401102696
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穏やかな入り江のある島.そこに建つ別荘で夏を過ごす年老いた姉妹.時はゆったりと流れていきます.高齢になり,眼も不自由になって気難しくなっている姉(ベティ・ディヴィス)を,やはり高齢の妹(リリアン・ギッシュ)が面倒を見ています.妹の夫は第一次世界大戦で戦死し,そのときは姉が妹の面倒を見たようです.それからの長い年月,2人の間にも,様々な出来事があったのでしょう.具体的な説明はなくても,観客に2人の歴史を共体験させていく,リンゼイ・アンダーソン監督の優れた演出です.
ドラマチックな要素は,あまりありません.山田洋次監督の「東京家族」が公開され,オリジナルである小津安二郎監督の「東京物語」も注目を集めましたが,この「八月の鯨」もドラマチックな要素が少ない,小津作品に似た雰囲気を感じます.
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