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はじめに
吸入療法は気管支喘息(喘息)における基本的な治療法と位置付けられ,わが国の喘息ガイドライン1)においても,吸入ステロイド薬(ICS)は軽症から重症のすべての喘息患者における第一選択薬と評価され,長時間作用性β2刺激薬(LABA)はICSとの配合剤として中等症以上の喘息患者で推奨されている.また,短時間作用性β2刺激薬(SABA)が軽度の発作までの治療薬と位置付けられている.
吸入薬は,主に加圧式定量噴霧吸入器(MDI)とドライパウダー吸入器(DPI)で使用される.すべてのMDIは,ハイドロフルオロアルカンを基剤としているためオゾン層の破壊はないが,地球の温暖化能力は二酸化炭素の1,300倍高いことが短所である.しかし,工夫次第で乳幼児や高齢者でも吸入できることが長所である.一方,すべてのDPIは,自己の吸気力で薬剤粉末をエアロゾル化するため,余分なエネルギーを必要とせず,環境破壊を誘発しないことが長所であるが,十分な吸気力を発揮できない患者には適応できないことが短所である.このようにMDIにもDPIにも,それぞれの長所と短所があり,患者の状態に応じて使い分ける工夫が必要である.
喘息患者にサルブタモールをMDIで吸入させた場合の気管支拡張効果は薬剤エアロゾルの粒子径に依存することが報告2)されているが,吸入薬の薬剤エアロゾルの詳細を把握することは吸入療法の臨床に直結する重要な情報である.現在臨床で使用されている吸入薬の各デバイスが発生する薬剤エアロゾルの粒子径は,カスケード・インパクター法による空気動力学的中央粒子径(Mass Median Aerodynamic Diameter;MMAD)で示され,厚生労働省への製造販売承認申請書には記載されているが,各製薬企業は医療従事者向けに積極的にはデータを公表していない.
ここでは,製薬企業が吸入デバイスの性能として示しているカスケード・インパクター法によるMMADの問題点を解説すると共に,筆者が報告3〜5)したエアロゾル粒度分布,エアロゾル化率,エアロゾル移動速度に基づいて,配合剤の吸入デバイスの性能を評価する.
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