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先天性心疾患における肺高血圧症の治療に関する最近の動向
2013年2月末にフランスのニースにおいて,第5回肺高血圧(PH;pulmonary hypertension)の国際シンポジウムが開かれた.本会議をもとに,2013年肺高血圧症に関するガイドラインが米国1)から公表されるに至っている.本会議で大きく注目を集めた分野が先天性心疾患(CHD;congenital heart disease)由来のPHである.表1に示されるように,CHD-PHは,従来からの1群に分類されてきたシャント由来のCHD-肺動脈性肺高血圧(PAH)に加え,先天性の体心室流入路/流出路狭窄や先天性の心筋症によるPHを2群に,先天的な肺発育障害によるものを3群に,5群には末梢性肺動脈狭窄が混在したPH状態の病態を意識した分葉性PHを据えるなど,PH分野におけるCHD-PHの重要性や多様性をかなり意識した分類になっている.また,単心室循環を余儀なくされるCHD症例においては,Fontan手術が施行されてきた.この循環を支える根幹であるのが,肺血流の流れやすさである.流れやすさを決める前毛細管(pre-capillary)要因の一つが肺血管抵抗値(PVR;pulmonary vascular resistance)である.そして,後毛細管(post-capillary)的要因が体心室収縮・拡張機能および房室弁機能である.肺心室(機能的右室)が欠落しているFontan循環不全を考える場合,PHカテゴリーに定義上(平均肺動脈圧25mmHg以上)含まれる症例はFontan循環不全末期症例のみになってしまうため,現状のPH基準をそのままFontan循環患者に当てはめることは適当でない.しかしながら,病因的な観点から,Fontan循環であっても特にpre-capillary病変によりPVRが上昇した場合はPAH治療薬が効果を呈する可能性があると考えられ,ガイドライン上言及されるに至っている.
このように,CHD-PHは,PH分類の多岐に渡り関与するが,いまだエビデンス形成が遅れているため治療指針に関しては個々の症例については個別の判断となってしまうのが現状である.今後,診断と手術の進歩により,CHDの構造修復術後にPHが残存する症例の割合は減少の一途をたどることが予想されてはいる.しかしながら,CHD-PHのなかでPAHに限ったとしても,現時点で成人CHD(ACHD)の3.2~10%の症例にPAHは合併しているという報告もあり2~6),悠長にエビデンス形成を待てない患者群が相当数存在している.日本では,2007年時点でACHDは推定40万人を突破しているとの報告があり7),その時点での単純計算で,約1.4~4万人規模のACHD-PAHが存在するという計算になる.今回のニース分類において,ACHD-PAHは新しく4つの病態に分類されている(表2)1).PAH治療上,この分類に加えPVR上昇によるFontan循環不全もまた類似疾患として考える必要がある
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