Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
はじめに
わが国における悪性新生物の部位別死亡率で肺癌は,男性においては1993年に胃癌を上回って第1位,女性においては2007年に大腸癌に次ぎ第2位になった1).2006年に超高齢社会に突入したわが国においては,今後なお肺癌罹患者が増加すると思われる.近年,画像診断技術の向上により,肺癌の早期発見症例は増加してきているものの,未だに進行状態で来院される患者も少なくない.種々多様な肺癌患者の診断を確実に行い,より適切な治療戦略を立てることが臨床の場で求められている.
肺癌診断において重要なものの一つにリンパ節評価がある.CTのみで評価していた1990年代から,2003年にFDG-PET検査が保険適応となり,リンパ節の転移評価に有用であり,普及に繋がった.しかしながら,2004年の全国肺癌登録調査におけるYoshinoらの報告2)によると,cN2のc-stage ⅢAの非小細胞肺癌切除例800例においてpN0, 1症例が346例(43.25%),pN2症例は436例(54.5%)であり,N因子の臨床評価が十分でないことを示した.そのN因子,特に縦隔リンパ節の診断をより正確に行うことを主目的に開発されたものが超音波気管支鏡(EBUS;endobronchial ultrasonography)である.EBUSは他の領域において使用されてきたものが,1990年代に入ってから呼吸器内視鏡分野において開発・臨床応用に至ったものである3).気管・気管支病変,気管支周囲病変を内腔から描出する検査法であり,機種がprobeによりconvex typeとradial typeの2つがあり,それぞれ特異的に検査に用いられる.特に,現在,世界的に広く普及しているものは,2002年に本邦で開発,2004年に臨床応用に至ったconvex typeのEBUS(convex probe-EBUS;CP-EBUS)である4,5).CP-EBUSを用いたEBUSガイド下針生検(EBUS-TBNA;endobronchial ultrasound guided transbronchial needle aspiration)はそれまで全身麻酔下の縦隔鏡に頼っていた縦隔リンパ節転移診断を含む,気管・気管支周囲病変の診断を,局所麻酔下のリアルタイムで行うことを可能にした.臨床応用以降,肺癌のstagingにおける臨床成績,安全性,cost benefitや経済効果などの有用性が広く示されるようになり6,7),呼吸器分野において,まさに画期的なものとなっている8).国内における気管支鏡が400余りの施設に導入されているのに対し,CP-EBUSは300以上の施設に導入されている.しかし,EBUS施行症例が20症例未満の経験の少ない施設が64.2%と多数を占めており,より適切な治療戦力を立てるには十分とは言えないのが現状である.本稿では肺癌におけるEBUSの役割を述べ,EBUSを知り,明日からの診療に役立つものにしていただくことを目的としている.
Copyright © 2014, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.