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はじめに
気管支喘息(以下,喘息)は“気道の慢性炎症を本態とし,臨床症状として変動性をもった気道狭窄(喘鳴,呼吸困難)や咳で特徴付けられる疾患”であり,主にアレルギー性気道炎症が関与する1).一方で,慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)は,“タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入曝露することなどにより生ずる肺疾患であり,呼吸機能検査で気流閉塞を示す疾患”であり,主に喫煙による慢性炎症が関与する1).両者は異なる原因および機序で病態が形成され,臨床的特徴も異なる疾患ではあるが,ともに閉塞性換気障害を示し,実臨床においても両者を厳密に区別できない症例も多く存在する.
このような喘息の特徴とCOPDの特徴を併せもつ患者は,増悪が頻回で生活の質(quality of life:QOL)が低く,生命予後も不良であることが報告されており,2014年に喘息の国際組織であるGINA(Global Initiative for Asthma)とCOPDの国際組織であるGOLD(Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease)とが共同で,喘息−COPDオーバーラップ症候群(asthma-COPD overlap syndrome:ACOS)に関するステートメントを発表した2).さらに2017年には,“症候群(syndrome)”は原因不明で共通の病態の場合に使用される言葉であること,ならびに喘息もCOPDも単一ではないさまざまな機序によって病態が形成され,臨床的特徴も多様性を認める疾患であることなどから,“症候群(syndrome)”という言葉は外され,喘息−COPDオーバーラップ(asthma-COPD overlap:ACO)と呼称することが提唱された3).そのような背景もあり,2017年12月に日本呼吸器学会より,「喘息とCOPDのオーバーラップ(Asthma and COPD Overlap:ACO)診断と治療の手引き」(以下,ACO診断と治療の手引き)1)が発行された.
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