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PADの臨床的脅威
間歇性跛行を有するPAD患者は下肢に関しては5年で27%が症状の進行を認め,4%が下肢切断に進行するが,20%に心血管イベント(心筋梗塞,脳梗塞)を発症し30%が死亡する1).すなわち,跛行患者の患肢の予後は良好であるが,致死的心血管イベント発症率は極めて高率である.また,跛行症状がなくてもPADの存在のみで心筋梗塞発症率,死亡率が増大することが知られている.心血管イベント増大の原因として運動量低下による内皮機能障害,酸化ストレスの増大が,各種生活習慣病の悪化に重複して,動脈硬化の進行→不安定プラークの形成→破裂→心筋梗塞/脳梗塞の発症に至ることが挙げられている.NissenらはIVUSを用いた,薬物介入による冠動脈プラークの進行/退縮試験のメタ解析で,PAD患者は有意に冠動脈プラーク進行を認めることを報告している2).運動療法は心筋梗塞患者の心血管イベントを抑制し,非心筋梗塞患者と同等の予後を獲得できることや,PCI施行後の死亡/心筋梗塞を有意に減少させることが報告されている.冠動脈疾患患者のみならず運動耐容能の低下は死亡率の増大につながることも報告されている3).
REACH Registryは冠動脈疾患患者の25%に脳血管または下肢血管に動脈硬化性疾患の合併を認めたと報告しているが,複数血管病の併発は予後を悪化させ,単独疾患では冠動脈,脳血管よりもPADの予後が最も劣悪であることを報告している.同様の検討を当院でもPCI施行患者1,547人にABIと血管エコーを用いて全身血管病評価を行った.28%に冠動脈以外の部位に有意な動脈硬化病変を認め,特にPADの合併は18%と最も高率であった.また,その予後は冠動脈疾患単独に比べ,複数血管病の併発は有意に死亡/心筋梗塞/脳卒中の発生率を増加させた4).
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