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はじめに
平成18年の国民健康・栄養調査によると,本邦における高血圧人口は約4,000万人と推定されており,加速する高齢化社会において,今後一層の増加が推測されている.高血圧そのものは,無症状であることが多いが,長期にわたり放置しておくと,脳卒中,心筋梗塞,さらには腎不全を合併することがあり,高血圧の管理は,医療経済の観点からも最重要課題の一つといえる.さらに最近では,高血圧は認知症の危険因子であることが分かり,本邦のような高齢化社会にとっても降圧療法が長期予後改善や認知機能保持に有効であることが明らかにされ,健康長寿の観点からも高血圧治療の意義は大きいと考える.高血圧患者のうち治療を受けているのは全体の2分の1程度,治療を受けている患者のうちガイドライン通りに血圧がコントロールできているのはさらに2分の1程度と言われている.つまり,高血圧患者のなかで血圧が目標値通りにコントロールされているのはわずか4分の1に過ぎず,高血圧患者の4分の3は十分に血圧のコントロールがされていないことになる.これらの患者のほとんどは,われわれ医師により血圧が目標値に達していないにもかかわらず放置されている,また,患者自身の内服のアドヒアランスが悪いなどの理由によるものである.しかしながら,なかには,生活習慣の改善を行ったうえで,利尿剤を含む適切な用量の3剤以上の降圧薬を継続して投与しても,目標血圧まで下がらない患者も存在し,これを「治療抵抗性高血圧」と呼ぶ.
近年,降圧効果に優れ副作用の少ない降圧薬が次々と登場し,高血圧治療は大きな進歩を遂げているが,そのほとんどはレニン-アンギオテンシン-アルドステロン系をターゲットとしている.高血圧に影響を与えているもう一つの主要因子である交感神経系に関しては,β遮断薬やα遮断薬があるが,これまではこれらの治療薬以外に交感神経系を治療のターゲットとすることは困難であると考えられていた.ところが,近年,交感神経系をターゲットとした腎動脈周囲神経アブレーション(renal denervation;RDN)が登場し,その有用性が数多く報告されている.本稿では,RDNによる降圧のメカニズム,また,海外で行われた臨床試験の成績を紹介する.
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