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はじめに
薬剤溶出性ステント(DES)の登場により,PCIの適応は拡大し,左主幹部病変や重症多枝病変の治療手段として経皮的冠動脈インターベンション(PCI)が行われることは稀ではなくなった.一方で,これまでのところDESを用いたPCIで患者の生命予後を改善するというデータは乏しい現状がある.言うまでもなくPCIを行うことの最大の目的はPCIを受ける患者の胸部症状の解除と生命予後の改善であり,造影上の狭窄をステント留置できれいに見せることではない.
冠動脈狭窄を認めた場合,その狭窄が心筋虚血を来すのであれば,治療せず放置することは,後の心イベントにつながる可能性が高いことは明白である.一方その狭窄が心筋虚血を来さないのであれば,その病変に対するステント治療はメリットが少ないばかりか,治療手技に伴う合併症,ステント血栓症,晩期再狭窄や抗血小板剤の長期内服に伴う出血性合併症などの有害なイベントの発生リスクを伴う.
PCIの適否や治療戦略を考えるうえで心筋虚血の評価は重要であるが,本邦では歴史的に冠動脈造影(CAG)の所見が狭窄の有意性を推し量るうえで最も重要視されてきた.しかしながらCAG所見の重症度が必ずしも機能的重症度と一致しないことはよく知られた事実である.非侵襲的な心筋虚血の機能的評価法として運動負荷心電図や,負荷心筋シンチグラム,負荷心エコー図法があるが,運動負荷心電図は感度,特異度に問題があり,負荷心筋シンチグラム,負荷心エコー図法は経済的,時間的理由により施行困難なこともある.事実PCIを行うすべての症例において非侵襲的検査がなされているわけではない1).
冠血流予備量比(fractional flow reserve;FFR)はカテーテル室においてCAGに引き続き施行することのできる侵襲的な機能検査である.特に個々の枝ごとの虚血の存在を評価できるため,多枝病変の症例でも有用性が高い.さらに,無作為比較試験においてFFRの有用性を示すエビデンスが相次いで報告されており,2010年にはFFRガイドにPCIを行うことが,ヨーロッパ心臓病学会(ESC)のガイドラインでクラスⅠ(エビデンスレベルA)とされた2).本邦でも近年その関心が急速に高まっている.本稿ではこれまでの報告からFFRの有効性を検証する.
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