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はじめに
ヨード造影剤を使用した画像診断は,現在の臨床医学において欠くことのできない重要な診断法である.例えば,腫瘍の存在,質の診断,治療法の選択には造影剤を使用した画像診断は必須であるし,心筋梗塞を発症した患者に対するインターベンションは造影剤によるイメージがなくては不可能である.造影CTは1年間にアメリカで3,000万件,ヨーロッパで2,000万件,日本で500万件が撮影されている.このように日常診療ではヨードの使用頻度は極めて高く,また,臨床的意義も確立されている.
一方,ヨード造影剤を使用した画像診断は日常的に高頻度で行われるが,ヨード造影剤を使用することによる腎機能低下,すなわち造影剤腎症のリスクについて十分意識されていないことも多いのではないかと危惧することがある.例えば,ヨード造影剤を使用した検査を受ける患者の腎機能はどの程度測定されているのであろうか? 血清クレアチニン(SCr)値の測定を行っていない患者も少なくなく,また,測定された時期も直近ではないこともある.この背景には,ヨード造影剤の使用に関する標準化がなされていないことが挙げられる.ヨード造影剤の使用法の標準化はガイドラインによってなされる.アメリカのAmerican College of Radiology,ヨーロッパのEuropean Society of Urogenital Radiologyからはガイドラインが出されているが1,2),わが国には「ヨード造影剤使用に関するガイドライン」がなかったことが挙げられる.
そこで,ヨードを使用した造影画像に関わることの多い日本医学放射線学会,日本循環器学会と,造影剤腎症に関わることの多い日本腎臓学会の3学会が共同で,「腎機能低下患者におけるヨード造影剤の使用に関するガイドライン」3)を作成することにした.ガイドラインは,通常,一つの学会が代表して作成することが一般的であるが,今回のガイドラインは3学会が同じ立場で参画し,ガイドライン作成委員会を立ち上げて,10回の会議を経て作成された.造影剤腎症に関連するテーマ9章を決定し,各学会から少なくとも1人は参加したワーキンググループが各章ごとにクリニカルクエスチョン(CQ)を作成し,デルファイ法にて最終のCQを決定した.各ワーキンググループは担当するCQに対して,1960年から2011年8月までの期間の論文を文献データベースとしてPubMed,MEDLINE,The Cochrane Library,医学中央雑誌を使用して検索・抽出し,批判的吟味を行った.エビデンスとして採用した文献に関してはエビデンスレベルをつけるとともに,アブストラクトテーブルを作成した.本ガイドラインはMindsに収載されることも目標とし,Mindsの推奨するCQ方式により作成した.
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