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連載 呼吸器診療での肺機能検査の必要性とその活用・6
換気応答,呼吸筋
Control of Ventilation and Respiratory Muscles
巽 浩一郎
1
Koichiro Tatsumi
1
1千葉大学医学部呼吸器内科
1Department of Respirology, Graduate School of Medicine, Chiba University
pp.595-601
発行日 2012年6月15日
Published Date 2012/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101980
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はじめに
「換気応答」,「呼吸筋力」に関する臨床検査は,日常臨床で実施している施設は少ない,あるいはほとんどない.しかし,呼吸器疾患患者の病態を理解するためには,「換気応答」「呼吸筋力」の根底にある考えを理解することが必要である.本稿では検査そのものの方法論ではなく,その裏にある病態理解に関する考え方を主に概説する1~8).
呼吸器疾患患者の病態生理を考える時には,安静時の呼吸機能検査の解釈だけではその病態理解は十分とはいえない.運動時,睡眠時,気道抵抗の上昇が生じた時(たとえば気道感染により喘息病態の悪化が起こった時)に,換気(呼吸)はどのような反応を起こしているのかを理解する必要がある.これが,広義での「換気応答」である.これらはあくまでも安静時の状態を基礎として評価することになるが,呼吸器系に対する負荷が生じた時の換気応答は,個体差・病態により異なると推定される.
低酸素状態に生体が曝された時の反応を考えると,たとえ健常人であっても,十分に適応(adaptation)する場合と,十分には適応し得ない不適応(maladaptation)の場合が想定される(図1).たとえば,高山での活動を考えると(登山ないしは縦走),低酸素状態に上手く適応しうる場合には運動耐用能が保たれ,適応が十分でない場合には高山病(高地肺水腫を含む)に陥りやすいとも考えられる.これは換気応答の強弱にも影響を受けていると考えられる.20年以上前のデータであるが,われわれがヒマラヤ登山隊の隊員の換気応答(狭義の換気応答)を調べた時,低酸素に対する換気応答が良かった隊員のほうが,高山での活動能力は高かった.
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