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特集 自律神経系と循環器疾患
ストレスと中枢性循環調節
Impact of Stress on Central Cardiovascular Regulation
桑木 共之
1
Tomoyuki Kuwaki
1
1鹿児島大学大学院医歯学総合研究科統合分子生理学
1Department of Physiology, Kagoshima University Graduate School of Medical and Dental Sciences
pp.275-282
発行日 2012年3月15日
Published Date 2012/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101910
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はじめに
ストレスが循環器に悪影響を及ぼすことはよく知られている.例えば,2006年のサッカーワールドカップドイツ大会の期間中にミュンヘン地区の病院に救急搬送され,心筋梗塞,不整脈,心停止と判断された患者数は,ドイツチームの試合日には他の日の2.66倍(男性3.26倍,女性1.82倍)に跳ね上がった1).患者の50%以上は心疾患の既往がなく,予知・予防は困難であった.ストレスが基礎疾患を増悪させたばかりでなく,心血管イベントの直接の原因になったと推測される.戦争や自然災害,身内の不幸などではさらに影響は甚大であろう.
ストレスという言葉は日常生活でも汎用される一般用語でもあるので,本稿を始める前に少しだけ整理をしておきたい.セリエ(Hans Selye:1907-1982)の元々の定義2)では有害刺激をストレッサー,それによって生体に生じた歪みをストレスと言ったが,物理学の世界では刺激をストレス,歪みをストレインと言うし,日常用語では刺激と歪みを区別せずにストレスと呼ぶ.本稿では紙面の制限もあるので,誤解の恐れのない限り刺激も歪みもストレスと記載する.また,ストレス応答に関して,セリエは警告反応期,抵抗期,疲弊期の3つに分類したが,その他の分類も多く提唱されている.ここでは急性期と慢性期の2つに分類して議論することとする.
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