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はじめに
気管支喘息におけるアレルギー性炎症の主体はTh2型免疫反応であると考えられている.Th2型免疫反応においてIL-4,IL-5,IL-9,IL-13などのサイトカインが産生される.気管支喘息の病態機序におけるそれぞれのサイトカインの重要性は,モデルマウスを用いた解析により示されている.こうした知見に基づいて,各Th2型サイトカインを標的とした気管支喘息に対する治療薬の開発も進められている.しかし,IL-5やIL-4/IL-13を標的とした治療薬の検討により,これらの分子標的薬が効果を示す喘息患者は全体の一部分であり,患者の病因における背景は多様であることが明らかとなった.
免疫学の進歩により免疫反応の複雑な調節機構が徐々に明らかとなってきている.こうした背景を受けて,気管支喘息の病態はTh2型免疫反応の亢進だけでは単純に説明できず,Th1型,あるいはTh17型免疫反応の関与や調節性T細胞の抑制もその一因であると考えられるようになった.これが喘息患者における病因の多様性につながっていると考えられている.
Th2型免疫反応は,抗原刺激を受けた樹状細胞などの抗原提示細胞が,T細胞をTh2細胞に分化させることによって開始されると従来より考えられてきた.しかし,近年,上皮細胞が抗原刺激を受けてTSLP,IL-25,IL-33といったサイトカインを産生し,これらのサイトカインがTh2型免疫反応の惹起や増強に関わっていることが明らかになった.これは,Th2型免疫反応の増幅反応は一つではなく,複数の経路が存在することを示している.このため,TSLP,IL-25,IL-33などTh2型免疫反応に関与する新規のサイトカインも,抗喘息薬としての新たな創薬標的となっている.
さらに,いわゆる古典的なTh2型サイトカインが,そのなかでも特にIL-13がどのようにして気管支喘息の病態を形成する分子メカニズムについても解析が進められている.IL-13誘導遺伝子産物が同定され,そのなかでchitinase/chitinase様蛋白質と陰イオントランスポーターであるpendrinが注目されている.これらの分子を標的とすることにより,Th2型サイトカイン阻害薬とは異なる抗喘息薬の開発が期待されている.
本稿では,このような気管支喘息におけるサイトカイン研究の最近の話題を取り上げ,紹介したい.
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