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はじめに
慢性血栓塞栓性肺高血圧症(chronic thromboembolic pulmonary hypertension;CTEPH)は,器質化血栓による肺動脈の狭窄や完全閉塞を原因として発症する疾患である1).平均肺動脈圧(mPAP)が40mmHgを超える症例では5年生存率が30%,50mmHgを超える症例では10%以下との報告もあり,非常に予後不良な疾患である2).一方で安定期のmPAPが30mmHg以下の症例では5年生存率100%と予後良好であり,有効な治療法の選択が重要である.
主要な器質化血栓や血管閉塞病変が主葉動脈から近位区域動脈に存在する中枢型CTEPHに対しては肺動脈血栓内膜摘除術(pulmonary endarterectomy;PEA)が適応となり,根治も期待できる.しかし,PEAは侵襲が大きいのみでなく,熟練を要する特殊な手術であり,実施できる施設は限定される.遺残肺高血圧や術後肺水腫,肺胞出血などの未解決の課題も散見される3).一方,区域動脈より遠位に主病変が存在する末梢型CTEPHはPEAの良い適応とはならず,プロスタサイクリン,エンドセリン受容体拮抗薬4),PDE5阻害薬5)などの肺動脈性肺高血圧症治療薬の応用が試みられてきたが,十分な治療効果や予後改善は得られず,標準的治療法の確立が望まれる4~7).
2001年にFeinsteinらによりCTEPHに対する経皮的肺動脈形成術(balloon pulmonary angioplasty;BPA)の有用性が報告8)されて以来,当院でも2004年から2011年7月までの間にPEA適応外の中間型から末梢型CTEPHでWHO機能分類Ⅲ度あるいはⅣ度の患者71例に対してBPAを実施し,循環動態ならびに自覚症状の著明な改善を得ることができた.
本稿では当院における肺動脈カテーテル治療の具体的な手技の実際と術前術後管理ならびに現在の問題点,今後の展望について概説する.
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