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慢性血栓塞栓性肺高血圧症(chronic thromboembolic pulmonary hypertension;CTEPH)は急性肺塞栓の稀な合併症で,器質化した血栓のために肺動脈が狭窄・閉塞を来して,肺高血圧症を呈する疾患である1).したがって,急性肺塞栓のように血栓溶解療法や抗凝固療法のみでは予後改善は期待できない2).本邦では,CTEPHは厚生労働省の指定難病に挙げられている.原因不明で予後不良の疾患であるが,従来から肺動脈内膜摘除術(pulmonary endarterectomy;PEA)と呼ばれる外科治療が行われ,適応となったCTEPH患者においては,根治に近い治療効果が示されてきた3).一方で,PEAは難度の高い手術であり,十分な経験を積んだ術者でなければ良好な成績を収めることができず,その適応も術者の経験に応じて限られてしまう.この問題の解決策としては,術者の経験症例数を増やす以外ない状況が続いている.むしろ最近では,既に多くの経験を積んだ欧米の術者の技量がさらに向上4,5)してPEAの適応範囲がどんどん広げられているため,本邦を含めてPEAが未だ十分に普及していない国・地域との差がどんどん広がってしまっている感もある.
CTEPH治療の領域における最近の大きな変化は,手術不適と判断された患者の内科的治療に関するものである.これまで手術不適なCTEPH患者は,抗凝固療法や在宅酸素療法に加えて肺高血圧症治療薬での治療を受けてきた.しかし,これまで行われてきた臨床試験の結果,CTEPHの治療薬として承認されるに足るだけの効果を有する薬剤は存在していなかった.近年,可溶性グアニル酸シクラーゼ賦活薬であるリオシグアトが,CTEPHの治療薬として有効であることが証明され6),本邦でも2014年1月に承認された.リオシグアトは使用の容易な経口薬でありながら,手術適応のないCTEPH患者の運動耐用能・血行動態を改善し,生命予後も改善することが期待されている7)一方で,血行動態の改善効果はPEAと比してあまりにも小さく6),PEAに匹敵するほどの効果は期待できないとも予測される.
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