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はじめに
近年,生命現象の解析や病態要因の解明などにおいて,「生きている状態の生物試料」における種々の生理活性物質の動態をリアルタイムに観測することが極めて重要であることが,強く認識されるようになっている.このような観測を実現する技法として現在,観測対象分子を高感度に可視化する蛍光プローブを用いて,蛍光顕微鏡下で生細胞応答を観測する技法が広く汎用されている.図1aに,蛍光プローブ,蛍光顕微鏡を用いて「生きている」細胞を「生きたまま」観測する手法の原理を簡潔にまとめた.観測対象とする生理活性分子(▽)の検出を考えるとき,ほとんどの生理活性物質は無色であるため,光学顕微鏡でただ観察してもその動きを知ることはできないが,本手法は,元々は無蛍光性であり,▽と反応・結合することで初めて蛍光を発する分子(蛍光プローブ)を細胞内に存在させることで,▽の動きを蛍光の変化として,高感度かつリアルタイムに追うことを可能とさせるものである.
例えば,Ca2+イオンが細胞内の情報伝達を司る代表的なセカンドメッセンジャーとして働いていることは,既に疑いのない事実であるが,これはCa2+イオンを選択的に蛍光検出可能な蛍光プローブの開発によるところが極めて大きい.代表的なCa2+イオン検出蛍光プローブであるfluo-3の構造とCa2+イオン検出の原理を図1bに示した.Fluo-3はフルオレセイン骨格とCa2+イオンキレーターであるBAPTA部位とが融合した構造であるが,Ca2+フリーの状態ではほぼ無蛍光であり,これがCa2+イオンと結合することでその蛍光強度が36~40倍に上昇するため,Ca2+イオン検出蛍光プローブとして機能する1).
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